授業の目的

最も一般的な材料であるコンクリートの基本的な性質を習得する。併せて,コンクリート工学に関する歴史的な知恵を紹介し、エンジニアリングセンスを習得する。 

 

授業の概要

コンクリート材料について,

・他材料と比較したコンクリートの特徴

・コンクリート材料の成り立ちと用途

・コンクリートの施工

・コンクリートの水和反応と硬化

・コンクリートの性状

・鉄筋コンクリート部材

についての講義を行う。  

 

到達目標

以下の「講義計画」に示す20の主題を理解し,そのことの説明を,コンクリートに関する各種現象を定量的または定性的に表現することができるようになる。

(コンクリート材料の成り立ちと用途)

1.コンクリートはセメントという名の接着剤を入れた高級な土石材料である。

2.コンクリートはストックとなる材料である。

3.コンクリートの存在意義は体積と形の維持と重量と安さである。

4.現場の材料に応じてセメントと水の使用量を最小にするのがコンクリートの配合(調合)技術である。

5.良いコンクリートを造るには,セメント,水および骨材のほかに知識と親切正直とを加えなければならない。

(コンクリートの水和反応と硬化)

6.コンクリートの硬化は乾燥ではなく化学反応による。

7.コンクリートは材齢と共に性状と体積が変化する材料である。

8.コンクリート誕生時の加水は強度を下げ,成長期の加水は強度を上げる。

9.緩やかな成長がコンクリートを強くする。

10.コンクリートは隙間だらけの材料である。

(コンクリートの性状)

11.引張り力に弱いのがコンクリートの宿命である。

12.自ら縮もうとすることによってひび割れが生じやすいのがコンクリートの宿命である。

13.構成材料の分布が不均一になりやすいのがコンクリートの宿命である。

14.継ぎ目が弱点になりやすいのがコンクリートの宿命である。

15.空気泡がコンクリートの強度を下げる一方で寒冷地での寿命を伸ばす。

(鉄筋コンクリート)

16.鉄筋コンクリートは鉄鋼材料節約のための構造形式である。

17.鉄筋コンクリート構造物の寿命を決めるのは鉄筋腐食である。

18.鉄筋とコンクリートの相性の鍵は腐食防止と変形の一体性である。

19.鉄筋が外側にあるほど耐力が増す一方,鉄筋が腐食しやすくなる。

20.鉄筋腐食をもたらす因子にはコンクリート自体には無害なものと有害なものがある。  

 

授業の方法

進め方:

・講義での説明を主体とする。

・宿題としてに練習問題を課し,講義翌日までに提出し,その解説を次回講義冒頭に行う。課題には計算問題の他に,60文字以内の説明文がある。

 

テキスト:

小林一輔・武若耕司著,最新コンクリート工学,第6版,森北出版

 

参考書:

・「2017年制定コンクリート標準示方書設計編および施工編」(土木学会)

・岡村 甫他著「ハイパフォーマンスコンクリート」(技報堂出版) 

 

授業計画

【】内は教科書の対応箇所を示す。

(総論)

1回 コンクリートとは:コンクリートの成り立ち,コンクリートに求められる性能,他材料との比較【第1章】

(コンクリートを構成する材料と配合)

2回 セメントおよび混和材料:セメントの成り立ちと水和反応【2.1, 2.2

3回 骨材:特性の定量化法【2.3

4回 コンクリートの配合【第5章】

5回 鉄筋:コンクリート材料との違い,腐食【2.5

(フレッシュコンクリートの性質,施工)

6回 ワーカビリティーと材料分離【第3章】

7回 施工【第7章】

8回 自己充填コンクリート【資料別途配布】

(硬化したコンクリートの性質)

9回 圧縮強度:水セメント比との関係,強度発現の要因【4.2

10回 引張強度,曲げ強度,せん断強度,付着強度【4.3

11回 弾性と塑性,クリープ【4.4

12回 体積変化とひび割れ【4.5, 4.6

13回 鉄筋の腐食【4.7

14回 凍結融解作用【4.12

15回 化学反応によるコンクリート材料の劣化【4.8, 4.9, 4.11

(最終試験)

16回 最終試験

 

成績評価の方法・基準

以下の項目を試験により確認し,評価する。

C:コンクリート材料について,

・他の建設材料との特徴の違いを定量的に説明できること。

・セメントの水和反応によるコンクリートの硬化メカニズムの基本を理解していること。

・与えられた条件からコンクリートの配合(各材料の単位質量)を求めることが出来ること。

・水セメント比と圧縮強度との関係式を用いて強度の予測が出来ること。

・鉄筋コンクリート部材の耐荷力における鉄筋とコンクリートの役割の違いを理解していること。

・コンクリートによる鉄筋腐食防止の役割を理解していること。

B:上記に加えて,

・骨材の表面水率の値から,単位水量及び骨材量の修正が可能であること。

・スランプ値の意味とその影響について理解していること。

・材料分離現象とその悪影響について理解していること。

・コンクリート材料自体の劣化現象(アルカリ骨材反応,凍結融解反応等)を理解していること。

A:上記に加えて,

・コンクリートに生じる外力以外によって生じるひび割れの原因について論じることが出来ること。

・材料・配合とおよび施工性及び硬化後の性状(体積変化,クリープ)との関係について論じることが出来ること。

AA:評価基準Aを満たすもので,例外的に優れているもの。例えば,試験答案において記述が必要かつ十分な説得力を有しているもの。 AA

 

授業時間外学習(予習・復習等)

宿題としてに練習問題を課し,講義翌日までに提出し,その解説を次回講義冒頭に行う。課題には計算問題の他に,60文字以内の説明文がある。

 

キーワード

コンクリート

鉄筋コンクリート

配合

水セメント比

セメント

空気

細骨材(砂)

粗骨材(砂利)

水セメント比

細骨材率

スランプ

材料分離

圧縮強度

引張強度

養生

乾燥収縮

自己収縮

塩害

塩化物イオン

鉄筋腐食

凍結融解(凍害)

アルカリ骨材反応

表面水率

表面水補正

粒度

 

他の科目との関連

履修前の受講が望ましい科目:

「システム工学実験」「力学基礎」「材料力学」「コンピュータリテラシー」  

 

備考

1.指定教科書1番による予習と復習を前提とする。

2.「土木施工管理技士」受験に際して必要な実務経験年数短縮のために学部卒業までに単位を取得すべきB群科目